前回の「裏読みケータイ」では、3G(第三世代携帯電話)においても、ケータイサービスの基本はあくまで「テキスト」と「静止画」だと述べました。
今回は、3Gに伴う「パケット単価低下」に、どのような意義と可能性があるのか考察してみましょう。
◆従来のiモードでは、「テキスト配信ビジネス」は成立しなかった
まずは下の表をご覧ください。これは、「文書ビューワー」としてのiモードの用途に着目し、あえて印刷物とiモードのパケットを、コスト面から比較してみたものです。
表●新書サイズの本と,imode携帯電話のパケットをコスト比較する
--3G導入によってもたらされたimodeのコスト低下は、テキストコンテンツに対しても普及効果がある。
| 媒体 |
パケット単価
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価格・料金
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印刷物とのコスト比率
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| 新書本(約16万文字) |
---
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約680円
|
---
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| 従来のiモード |
0.3円
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約750円
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約110%
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| FOMAパケットパック40 |
0.05円
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約125円
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約18%
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※上記は概算。1文字2バイトで計算し、ページリクエストに必要なパケットなどについては除外した。
こうして比較してみると、「テキストを読む機能」という点においては、実は、従来のiモードは印刷媒体に比してまるで経済性が成立していなかったことがわかると思います。
しかもこの計算は、コンテンツそのものの料金は計算に入れていませんので、もし有料で書籍コンテンツを配信しようとしたら、iモードはますますコスト面で不利となってしまうわけです。
そこで、FOMAのパケットパックの「印刷物に比して18%」という数字に着目してほしいのです。iモードからの閲覧が、印刷物である書籍に比べ、「2割弱」というコストになれば、仮にコンテンツに課金を行ったとしても、多くの場合で、現実的なコストで新書サイズの情報を提供できる可能性が出てきたのだと考えることができるでしょう。
ここで、ちょっと視点を変えて「レンタルビデオ屋さん」を思い出してみてください。
ビデオやDVDのパッケージはおおむね2千〜3千円以上しますが、レンタルならば料金は400円程度です。つまり、「わざわざ買って何度も見たいほどではないが、一度ぐらいは見てみたい」というワンタイム(一回限り)なコンテンツ需要に対して、人は「レンタル」という手段を選択するわけです。こうした「レンタル市場」の形成によって、映画産業そのものが大きく変革し、発達したことはご承知の通りです。
一方、「ケータイから閲覧するデジタルコンテンツ」も、基本的にワンタイム(一回限り)の閲覧を前提とするもので、その点で、どちらかといえば「セル」よりも「レンタル」に近い性質を持っていると言えます。したがって、パッケージ購入コストの何分の一かで取得できるコストパフォーマンスさえ成立すれば、この分野に、今までにはなかった新しい市場セグメントの可能性があると考える方が自然ではないでしょうか。
余談ですが、この話をあるパソコン雑誌でしたところ、編集部のデスクさんに「長い文章を携帯で読む需要なんかないよ」と言われてしまいました。
しかし、私は必ずしもそうは思いません。書籍とはちょっと違いますが、現在、あの「2ちゃんねる」は、ページビューの8%程度がケータイからのアクセスになっているということはご存知でしょうか?PCに慣れた人から見たら、あの「2ちゃんねる」をケータイで読むというのは実に大変な作業だと思われるのですが、それでも、あの「2ちゃんねる」を、パソコンを持っていなくても、「どこでも読める」という需要は、現状でもPV(ページビュー)の少なくとも8%分は存在しているのです。
こうした、ケータイから2ちゃんねるを読んでしまうような「ケータイヘビーユーザー」の間で、ひそかにFOMAは「パケ代を節約できるケータイ」として評価され始めているようです。実際、昨年私がお手伝いしたFOMAユーザーアンケート調査でも、FOMAの最大のメリットとして「パケットコストが安い」ことを挙げた人がもっとも多く、iモーションなど、動画に対する評価はさほどでもなかったのです。
NTTドコモも、最近になってようやくこの「コストメリット」に注目したのか、パンフレットやカタログなどで、「FOMAにすればパケット代がオトク」という打ち出し方をするようになってきています。実際、現状の3Gは、まだまだ動画や音楽データを気軽に扱えるコスト体系にはなっていません。
3Gならではのサービスを考える場合、「テキストや静止画の単価デフレこそが、新しいモバイル需要を喚起する」という前提から、今までのケータイでは成立しなかったサービスについて、可能性を考察してみるべきだと思います。